箸
2016年11月01日
教化部長 坂次 尋宇
かつて島根県へ行った時に携帯用の箸をプレゼントしてもらいました。この箸はロッドアンテナのように太い方に細い方が収納されて伸縮し短くなるため、携帯にはとても便利なのでいつも鞄の中に入れています。
■箸は世界の3割
さて、箸のことについて少しお話しします。箸の歴史は5,000年前に、中国で煮えたぎった鍋の中から食べ物を取り出す時に、2本の木を使ったのが箸の始まりと言われているそうです。そして現在では日本、中国、台湾、シンガポール、ベトナム、タイ、ラオス、カンボジア、モンゴル、韓国、北朝鮮等の東アジアの国を中心に世界の人口の約3割の人が使用しています。因みにナイフやフォーク、スプーンを使用する人は約3割で、残りの4割の人は手で食事をしているそうです。こうした違いは食べ物や調理方法の違いによるもので、日本のように粘り気のある米を主食とする地域や麺を主食とする中国は、箸を使用することが便利なのでしょう。
日本料理、中国料理の世界的な普及により、欧米でも器用に箸を使える人が増えてきているようです。最近では宇宙飛行士が宇宙での食事の際に食べ物をしっかりと持つことができると言うことで箸が利用されていると聞きました。
■魚を食べるのに便利
箸の形状も国によって異なり、日本の箸は片方の先が細くなっており、これは骨付きの魚を食べる際、骨と身をより分けるために便利です。中国の物はやや長く、両端がやや細くなっているものの日本の箸に比べてそれほど細くはありません。中国の長い箸は家族や来客に自分の箸で取り分けるのが親愛の情の表現とされているらしい。お隣の韓国は、短くてやや平たくステンレス製が主に使われているとのこと。
また、使い方が国によって少しずつ違いがあり、箸のみを使って食事をする国は日本だけで、汁物を食べるときも箸だけを使います。しかし、中国料理では、汁物を食べるときはレンゲを使用し、韓国料理ではご飯もさじを使って食べ、箸はおかず等の副菜をつまむ時や麺類で使用するのが一般的です。さらに日本の家庭の箸の使い方で特徴的なのは、各人専用のマイ茶碗やマイ箸が定められていることで、中国や朝鮮半島では行われていないということです。皆さんもこの機会にマイ箸を携帯し、森林破壊の防止に取り組んでいきましょう。
■長い箸の使い方
谷口純子先生著『突然の恋』の227頁に「長い箸の使い方」と題する御文章がありますのでご紹介します。
(前略)天国と地獄というのは、別々の場所ではないというのだ。そこでは人々は食事をするときには、とても長い箸を与えられる。ごちそうは沢山並べられるが、長い箸でないと届かないところに置かれているのである。長い箸だから、ごちそうをつまむことはできても、自分の口に入れることができない。ところが地獄の住人は、その長い箸で自分の口にごちそうを入れることしか考えられないので、必死になって口に入れようとするのだが、箸が長すぎて食べることができない。ごちそうはみな落ちてしまい、目の前にあるのに、飢えの苦しみを味わうというのである。一方、天国の住人は長い箸でつまんだこちそうを、自分の周りの人に食べさせてあげる。長い箸はお互いに与え合うのに好都合なのである。だからみんなおいしい食事を、お腹いっぱい食べることができるというのである。
この話では天国というのは何処にあるかというと、自分のことを優先して生きることよりも、人にしてあげることを優先することで実現するということを教えてくれています。日々愛行を実践して行きましょう。
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