毛虫が教えるものとは
2022年05月01日
教化部長 坂次 尋宇
■まさに毛虫の雨
数年前、妻と2人で5月の連休に晴天で気候も良かったので高松市と坂出市の境にある五色台という山の北側の大崎山園地へ行く予定でした。そこからの展望は瀬戸内海を挟んで西に瀬戸大橋、北に岡山県、そして東に屋島が望める素晴らしい所です。それで駐車場に車を止めて両側に葉桜となった桜並木の道を通って大崎山園地に行きかけた時、桜の木から無数の毛虫が糸で垂れ下がっていて、しかもずーと向こうの方まで続いているのです。このまま気づかずに歩いて行けば大崎山園地に着いた頃には体中毛虫だらけになってしまうと思い、行くのを止めてしまいました。この時の経験で春は毛虫の時期だから山へ行く時はそれなりの注意と準備が必要だと思いました。
■繫がっている命
さて、話は野鳥のヤマガラに変わります。香川県教化部でヤマガラに餌付けをして4年程になりますが、一年中餌を食べに来てくれるのかというと、3月下旬から5月末にかけて殆ど来なくなります。それはヤマガラが営巣をして雛鳥を育てる時期だからです。ヤマガラの様子を見ていると桜の葉にいる毛虫を幾つもついばんで飛び去って行きました。その毛虫を巣まで運んで大きな口を開き鳴いて待っている雛鳥に食べさせているのでしょう。
五色台の大崎山園地で毛虫の雨の様な光景に出くわしてぞっとしたのですが、色々な鳥たちが雛鳥を育てる季節に恰度時期を合わせて毛虫が育っていき、それが雛鳥たちを育てる餌になるという自然の仕組みに驚いた次第です。
■不都合な真実
2006年に元アメリカ副大統領だったアル・ゴア氏が発表した『不都合な真実』という本があり、同じ題で映画も製作されました。私はその本の中に地球温暖化による生物の生態系が変わっていく様子が示されていので次に紹介します。152~153頁
世界の気温上昇が場所によって異なるため、地球古来のリズムである春夏秋冬も変貌を遂げつつある。
(略)オランダの研究を見ると、25年前、渡り鳥が飛来するピークは4月25日だったことがわかる。ヒナが孵るのはそれからほぼ6週間後で、ピークは6月3日。ちょうど毛虫がたくさんいる時期である。それから20年間にわたって温暖化が進んだ今日、鳥たちは今も4月下旬にやってくるが、毛虫のピークは2週間も早まってしまっている。母鳥たちがこれまでヒナのエサとして捕まえていたものがないのだ。孵化のピークは若干前倒しになってきたが、それでも瞬時に大きくずらすことはできない。結果として、ヒナたちが窮地にたたされている。
■新しい文明の構築へ
地球温暖化の原因は、産業革命以来、長期に亘って化石燃料を使い続けて来たことで大気中に二酸化炭素を放出し、それが大気の温度を上昇させているのです。私たちはこうした地下資源を利用する「地下資源文明」から地上の再生可能な自然エネルギーを基礎とした「地上資源文明」へと転換を図っていかなければなりません。
私たちは、地球の全ての生物が今までの様に生き続けていけるよう、神・自然・人間が一体であることの自覚を深め、今からでも一人一人の生活を見直して地球に負荷をかけない生活に転換して行きましょう。
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