水かき

2018年06月01日

教化部長 坂次 尋宇

■水かきの役目
 「水かき」はカエルや水鳥が泳ぐために足の指と指の間に張られた膜で、泳ぐときの推進力を得る目的のために発達したものであり、白鳥のような大型水鳥では着水時のブレーキにも使用されています。泳ぐ時の足の使い方は、足が前方に来た時に指を開いて膜の面積を最大にして後ろへ蹴ります。足を前に出す時は、水の抵抗を減らすため指をすぼめて膜を閉じます。動物が生きていくために神様が与えてくれた最高の機能ですね。

■人にも?
 さて、水かきは動物だけのことだと思っていましたら、なんと人間にもあることを知りました。1988年ソウルオリンピックの100m背泳ぎで金メダルを獲得した鈴木大地選手や、オーストラリアの元天才スイマーであるイアン・ソープ選手も、手の指の間に水かきのような膜があったことは有名だそうです。色々と調べて見ましたら、子供のころからずーと長い間水泳をしている人や、毎日水泳のトレーニングをしている高いレベルの選手では見られる現象らしいのです。現在では、より早く泳ぐための手の水かきグローブが販売されているようです。

■仏様の水かき
 ところで水かきではあるものの、まったく目的の違う水かきがあることを知りました。それは仏様の「水かき」です。この水かきのことを「手足指縵網相」(しゅそくしまんもうそう)というそうで、仏様の手で衆生を残らず救い取るためには少しでも手の面積が広い方がよいという意味合いがあり、更に仏様は人間に比べて腕が長く作られていて、これも同様の意味があるようです。

 『新版 菩薩は何を為すべきか』の「はしがき」には次のように書かれています。
 菩薩とは如何なる人々のことであるかと謂えば、諸君のことである。自利のためのみに生活せず、利他のために真理をふかく研究し、自己の魂を向上せしめると共に、その真理をもって多くの他の人々の魂の向上に貢献し幸福を施してやまざる如き人々である。(中略)在家の宗教は、生活そのものが宗教となるところに特色があるのである。即ち人は菩薩となり、生活は菩薩行となるのが本道である。菩薩行とは自己がみずから完全に救われないでも、自己のことは顧みず、率先して他を救おうとする即ち人類光明化運動にまで発展すべきである。

 観世音菩薩様の大きな「水かき」の様に、私たちもまた小さな水かきで、人が幸せになるお手伝いをさせて頂きましょう。