タイヤの行方

2021年09月01日

教化部長 坂次 尋宇

■タイヤの摩耗カスRIMG1262
 プラスチック製品の劣化と崩壊によって生まれるマイクロプラスチックが、地球環境の悪化や生態系に大きな影響を与えているとして大きな問題になっいています。その対策としてレジ袋の削減等プラスチック製品を使用しない運動や、プラスチックの代替え品として紙や木や金属を使用した製品の生産が進んでいますが、まだまだ遅々たるものです。
 私が以前から疑問に思っていたことはタイヤの摩耗カスの事です。タイヤは自動車を始めとして自転車やバイク、航空機、モノレールなどの鉄道用タイヤ等に使用されていて、その乗り物が開発されてから長い間生産され続けています。タイヤは走行することによって摩耗するので、当然タイヤの摩耗カスが道路の表面にある小さな隙間に残っていて、風が吹けば空気中に舞い上がり、雨が降れば最終的に海へ流れ出るはずです。また現代のタイヤに使用されているゴムは当然石油から作られた合成ゴムですから、マイクロプラスチックと同様に地球環境の悪化や生態系に大きな影響を与えていると思われますが、現状何の規制もないし改善しようとする動きも殆ど見当たらないように感じます。
 
■疑問視する人を発見
 さて、タイヤの摩耗カスが年間どれくらい排出されているかをインターネットで調べてみましたが、タイヤの成分、構造や性能、用途、生産量といったものばかりでした。福岡市在住のペンネーム「ファカタの夏」さんが「車のタイヤ摩耗カスはどこへ消えているのか?」と題する研究発表を投稿されていたので、そこから引用します。
 
①日本の年間のタイヤの摩耗カスの量(二輪車と自動車)
   私的計算で約65,600トン
②いままで問題化されたことがあるか
 環境問題として取り上げられていない。
③法令による規制はあるのか
 タイヤは産業廃棄物だが、摩耗カスは規制がなく回収もされていない。
④環境に悪影響を与える物質は
 石油由来の原料のナフサで作られる合成ゴムで、ゴムの木から採取される天
 然ゴムと同量が使われている。

■対策はあるのかRIMG1263
 このような状況の中で、全く対策を講じていないという訳ではなく、色々と調べて見ますと各企業が対策に真剣に取り組んでいました。
 ダンロップが2013年にエナセーブ100という石油以外の自然素材を100%使ったタイヤを市販しました。横浜ゴムのオレンジオイルは、分子構造が天然ゴムに近くゴムとの相性が良いため、そのオイル配合のタイヤブルーアースを開発。グッドイヤーのトウモロコシから採れるバイオフィラーを採用したトレッドコンパウンド、トーヨータイヤの鬼クルミの殻など、近年植物由来の素材を積極的に採用するタイヤメーカーが増えて来ているそうです。

 このような開発状況を見てみると、100%天然素材を利用したタイヤが普通に使用できる時期が間もなくやって来ると信じています。子や孫そして未来の子供達の為にも天然素材のタイヤの普及が切に望まれます。