虫を飼う

2022年07月01日

教化部長 坂次 尋宇

■虫の声watermark[1]
あれ 松虫が鳴いている
ちんちろちんちろ ちんちろりん
あれ 鈴虫も鳴き出した
りんりんりんりん り―んりん
秋の夜長を 鳴き通す
ああ おもしろい虫のこえ

 この唄は童謡の「虫の声」で皆さんも子どもの頃に歌ったことがあると思いますが、その他にも「赤とんぼ」「蝶々」「黄金虫」など昆虫の唄は幾つもあります。特に「虫の声」は虫の鳴き声を聞いて、季節や風情を感じ取って心が癒やされる感じです。
 そのため鈴虫やコオロギ・キリギリス等を捕ってきて虫かごに入れて自宅で飼い、その鳴き声を身近に聞くこともしますよね。

■虫の音を愛でる日本人
 ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲は、日本では虫の地位がとても高いことに興味を示し、次の様に書いています。
「千年の歴史を持つ文学が、ものめずらしく繊細な美で充ちあふれる文学が、このはかない命の虫という題材から成り立っている、などとはどんな外側人に想像できるだろうか。」
 またハーンは、日本でこうした鳴く虫を飼うという習慣が、おそらく平安時代に書かれた『源氏物語』の「野分」の一節に書かれていたことを紹介しています。また江戸時代には虫屋という商売がすでにあったそうです。

■虫を飼う習慣は少数民族450-20150224155151225453[1]
 私たちが小学生や中学生の頃にカブトムシやクワガタを捕ってきて飼った経験は誰しもあると思いますが、この虫を飼うという習慣は日本人とポリネシアのごく一部に限られているそうです。特に白人が多く住んでいる国では、虫に対する関心が大変低く、カブトムシはゴキブリと変わらないものと感じていて、その証拠にカブトムシを英語で言えばビートルとなりますが、英語ではクワガタもコガネムシもカナブンも全てビートルと呼ぶようです。またトンボのことをドラゴンフライと言い、ハエはフライと言うのでトンボとハエの区別を日本人のようにハッキリと区別していない事が分かります。
 そう考えるとゴキブリと同じと思うカブトムシをわざわざ飼いませんね。
 
■人も虫も自然と一体
 日本人はこうして自然の全てのものと同じ生命体であって、共に暮らしている大切な仲間だと言うことを知っていたと考えられます。【「すべては一体」と実感する祈り 】を次に紹介します。
 神はすべての存在の創り主にてあり給う。我は神の子として、神の創り給いしすべての存在の懐の中に抱かれているのである。だから我は、すべての真実存在と一体であり、すべての真実存在は我と一体にして、我を包み、庇護し、安らぎを与えてくれるのである。真実存在は神の表れであるから、相互に不和はなく、不調和はなく、戦いや争いはないのである。我とすべての真実存在も、だから大調和の中で神の愛に包まれているのである。
 鳥たちのさえずりは、神の無限生命の表れである。遠く近く、長く短く、華やかに時に静かに、多様に、絶妙な調和の中に、鳥たちが呼び交わす数々の声は、そのまま天上の交響曲である。森林を風がわたる低い和音、虫の声、小川の流れ、蛙の合唱、キツツキの槌の音、どれ一つとして互いに調和しない音はない。驟雨の音、雷の轟音、木の裂ける音でさえ、神の無限生命力の表現である。(後略)