先祖の気持ちを汲んで供養
2022年11月01日
教化部長 坂次 尋宇
■甥が死んだ父親と同じ病気に
平成元年、32才だった妻の弟が腎臓病で亡くなり、その後にはその妻とまだ幼い3人の子供が残りました。その当時、私も義弟と同じように3人の子供がいたので、義弟の気持ちが良く分かっているつもりでいましたが、本当は何にも理解していなかったことが後で分かるのです。
義弟が亡くなり3年程過ぎた2月頃だったと思います。義妹から幼稚園の年長になっていた三番目の男の子が突然病気で入院したとの連絡があり、その病名がなんと亡くなった義弟と同じ病気だと聞かされたのです。甥はこのままの状態で入院を続けると、4月から新入生として小学校に入学できなくなるかもしれないと医師から告げられたそうです。私はそれを聞いて亡くなった義弟が、霊界において病気のまま苦しんだり悲しんでおり、そのことを知って貰おうと我が子にその症状を現して訴えているのだろうと気が付きました。
■義弟の供養
妻の母も義弟夫婦もみんな生長の家の教えを信仰していましたので、甥の病気の原因が何であるかを皆よく理解していました。ところが私は、今まで義弟のために供養をしっかりとして来なかったことがこうした結果を生んだのであり、それは義理の母や妻、そして義妹の責任であり「あなた方がしっかり供養しないからいけないんだ」と心の中で責めていました。
しかしよく考えて見ると、私自身が義弟のために真心を込めて真剣に供養をしたことがあったのだろうかと振り返ってみると、確かに生長の家のお経の一つである『甘露の法雨』を誦げて供養することはしましたが、心のこもった供養はしたことがなかったのです。皆が供養しなければならないのではなく、私自身が亡くなった義弟に対して真剣に供養することが一番大切なことであると深く反省したのです。
早速、義弟のために妻と共に『甘露の法雨』を毎日誦げて供養することにしました。 供養を始めて20日ぐらい過ぎた頃でした。NHKの教育テレビで、「ガンは治る」と言うような題の癌に関するドキュメント番組が放送されていました。紹介されていた病院は、当時病気に対する考え方が普通の病院とは異なり、癌の患者さんは癌を自分の力で克服するように指導されており、医師に治して貰おうとするような人は入院できないことになっているのです。その番組では癌を治して貰うのではなく、癌と闘い癌を克服していく患者さんの姿が描かれていました。
義弟と同年代の癌患者さんが次のように話していました。
「始めは普通の病院に入り抗癌剤やコバルト治療を行いましたが、心の方は不安で一杯でした。しかし、ここへ来てとても心が前向きになり、病気に立ち向かう勇気を教えてもらいました。そして癌と戦うための心の支えとなっているのは、家族である両親や妻そして子供達の暖かい愛なんです。」
■義弟の気持ちを理解する
この患者さんの言葉が私の心に深く突き刺さりました。私は今まで義弟に対してどのような接し方をしてきたのだろうか。義弟が入院している時に見舞いに行きましたが、義弟は私の暖かい愛の言葉や励ましの言葉を待っていたにも関わらず、優しくいたわるどころか逆に励ますつもりで厳しい言葉や冷たい態度で弟に接してしまったことを思い出したのです。その時、初めて亡くなった当時の義弟の悲しさや苦しさが痛いほど理解できたのです。義弟のそうした気持ちを理解してあげられず本当に申し訳なく思い、その日は涙を流しながら亡くなった義弟のために真剣に『甘露の法雨』を誦げることができました。
■甥の病状が回復へ
さて、翌日義妹から電話が掛かってきたのです。それは入院している子供の容態が今日から急に良くなったとの知らせで私は驚きました。霊界にいる義弟の気持ちを理解してあげることができたことで、霊界の義弟が本当に喜んでいるのだと感じられたからです。その後、甥はしばらくして無事退院し2ヶ月程遅れて小学校に入学することが出来きました。
私がこの体験から学んだことは、自分自身の信仰姿勢の間違いを正すことができたことです。あらゆる問題を他に転ずるのではなく、一切の問題の根源が自分にあるのであり、自分が変わることによって全ての問題が解決できるのであると。また、先祖供養を日々行うと同時に、亡くなられた方の気持ちを良く理解してあげるとともに、人間は神の子であることの素晴らしさを知らしてあげることが大切であると感じました。
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